NICE PEOPLE
素敵なデザインの家具を永く、大事に。
万屋町の一角に、気になる外観のお店があります。白壁に瓦の、レトロで印象的な佇まい。このお店は、入ってすぐのところに雑貨が、お店の奥と二階には家具が置いてあります。このお店にある様々な家具に共通しているのは、「良いデザインで永く使えるもの」であること。YOROZUYAIZUMIさんの考え方を副店長の村里さんに、長崎大学経済学部山口研究室の学生2人(黒木、近藤)が伺いました。
インテリアショップ YOROZUYAIZUMI
村里翔さん
長崎大学経済学部山口研究室
黒木・近藤
―畳の上にソファや背の高いテーブルがあり近代的な雰囲気を感じますが、コンセプトを教えてください。
村里さん:
当店のコンセプトは、「和」と「北欧」です。それらをテーマに家具や雑貨を取り揃えています。お店自体も、築50年以上の民家をリノベーションして売り物の家具を展示しています。ですので、実際に自分の家の中だったらどの家具が合うか、どのように配置するかをイメージしながら、家具を選んでいただけるようになっています。
―そんな工夫があると、楽しみながら家具を選べそうですね!では、そんなYOROZUYAIZUMIさんで取り扱っている商品についてこだわりなどはありますか?
村里さん:
先を見据えて、何年も使える家具かどうか、デザイン性と品質の観点から見ています。また、仕入れる時は、その家具が生活にどう溶け込むか、使い勝手がいいか、お客様にとってその商品のお手入れが簡単か、という点も気にしています。
―そうなんですね。確かに、店内の家具はどれもかっこいいですね。家具について、先ほど、「和」と「北欧」をテーマに家具や雑貨を取り扱っているとお話ししてくださいましたが、日本製と北欧製の家具に絞って置いているということでしょうか?
村里さん:
家具のほとんどは、国内生産されたものと、デンマークから仕入れたものですね。一部、メーカーは日本で、工場が中国にある製品も取り扱っています。デンマークの家具はヴィンテージのものも取り扱っています。このブックボードは1960年代に作られたものなんですよ。
村里さん:
デザイン性が高いので、半世紀前のものとはとても思えません。デンマークの家具は、派手な装飾がなく、飽きが来ないシンプルなデザインのものが多くて、永く使えるのが特徴です。
―永く使う、というと、YOROZUYAIZUMIさんはリペアサービスにも取り組まれていますが、そちらについても詳しく教えてください。
村里さん:
ここでは他店で購入された商品もリペアサービスの対応をしています。リペアで一番多いのはダイニングチェアです。破れた座面の張替や、中材の交換などの依頼が多くあります。
―これまでのリペアサービスの依頼で印象に残っているエピソードはありますか?
村里さん:
100年以上前に作られた、ソファのリペアを依頼されたときは驚きました。リペア費用は少し高くなりましたが、「祖母から受け継いで、どうしても座りたいから」という想いに応えることができたので、やりがいを感じました。お客様に大変喜んでいただいたことが印象に残っています。
―とても素敵なエピソードですね!普段、他には、どんなお客さんが来店されますか?
村里さん:
40代から60代のお客様に多く来てもらっています。最近は、県外の方や外国人観光客の方も多くご来店されます。お店の外観や、店頭に盆栽を置いているところに「日本の文化」を感じて来店してくださる方もいらっしゃいますね。
村里さん:
また、出入り口付近に雑貨を置いているので、家具を買う用事がなくてもご来店いただいています。
―雑貨だと手に取りやすいですよね!では今後、どういったお客さんに来てほしいですか?
村里さん:
20代前半の若年層の方にもっと来店してもらいたいという想いがあります。
デンマークには、初任給で良いイスを買うという慣習があるそうです。永く使って、壊れたらその都度修理して、自分の子どもや孫に継承していくという文化なんです。そんな風に、良いものを永く大切に使うような慣習を若い時から楽しむなんて素敵だなぁと思います。
―社会人になったら背伸びして買ってみようかな(笑)。ただ、魅力的なイスがたくさんあり迷ってしまいます。どれがおすすめですか?
村里さん:
こちらのYチェアがおすすめです!世界的に有名なデザイナーによって生み出された、北欧家具の中の名作です。
―長年、世界中の人に愛されているイスなんですね!どんなイスなんですか?
村里さん:
座面が「紙」でできているところですね。ペーパーコードと言って、ショッピングバックなどに用いられる紙と同じ素材を使っています。ペーパーコードを編んで、1本のロープにし、巻きつけて座面を作っているんですよ。これを解くと120mの長さになります。ただ、10年から15年くらいで少し緩んできちゃうので、これを当店に持ってきてもらい、修理して、また使ってもらうんです。
―木のさわり心地もいいですが、どんな木を使っているんですか?
村里さん:
これは、ビーチ材です。木目が少ない、ちょっと白っぽいのが特徴です。50年くらい経つと、手の脂や周りの環境などに馴染んできて、木の色が飴色になっていきます。
―使えば使うほど、好きになりそうなイスですね!ですが、最近は手ごろな価格で家具を買えるようになり、壊れたらまた新しいものを買うサイクルができているように感じます。YOROZUYAIZUMIさんでは永く使うことを前提に家具を販売していますが、使い捨ての家具と永く使える家具の違いについてはどのようにお考えですか?
村里さん:
表面的に違いが分からない場合もありますが、使っている素材が全然違うという点があります。永く使える家具は、丈夫で質の高い木材を使い、時間と手間をかけて製造しています。そのため、壊れにくく、自分が使わなくなっても後世に残せるアイテムとして永く活躍してくれるんです。ここが使い捨ての家具とは違うところかなと思っています。
―丁寧なものづくりが質を左右するんですね。ちなみに、村里さんがお仕事を通して感じている社会問題などはありますか?
村里さん:
わたしこの家具業界に入る前はアパレル業界で仕事をしていました。アパレルでも課題になっていることですが、大量生産の問題は気になっています。大量生産の先で、無駄に作られてしまったモノの行き着く先がどうなるのかは個人的に気になります。
―大量生産の問題は多くの業界で注目されていますよね。そんな中で、家具やインテリア業界でサステナブルな流れを感じることはありますか?
村里さん:
長崎県内ですと、家具におけるサステナブルな取り組みはまだまだと思います。家具の再販や張替という面では、長崎県内で当店は取り組んでいる方だと思います。
一方、お客様の中には、家具のメンテナンス用のオイルを定期的に買いに来てくださる方が少数ですがいらっしゃいます。今後、長崎にも、ものを永く使う工夫をする会社が増えて、お客様の認識が広まっていくといいな、と思います。
学生のあとがき
長く愛され、使い続けられる家具の共通点には、品質の良さからくる耐久性と、飽きのこないデザインがあることがわかりました。捨てる前提ではなく、永く使い続けることを考えて買う意識にシフトさせることで、社会や環境にかける負荷を減らせるだけでなく、家具が「次の世代に想いを繋ぐバトン」になる、と感じました。永く使える良いものを選択することが、無駄な消費・生産を防ぐアクションとして、私たちにできることではないのでしょうか。村里さん、ありがとうございました。
インタビュアー:長崎大学経済学部山口研究室
この研究室では、誰もが豊かに暮らし続けられる地域社会をつくることを目的にしています。地域経済学を基に、学内外で知識の習得から実践にいたる研究活動を展開することで、遠い時間、広い空間、多様な人を想う心と考える頭を持って行動できる人材の育成を目指しています。