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歴史文化×夜景観光×脱炭素。長崎市版サステナブルツーリズムの実現に向けて。
2023年11月、長崎市は環境省の定める「脱炭素先行地域」に認定されました。現在、国の支援を活用しながら、産官学連携して取り組みを進めています。
今回は夜の居留地エリア街を歩く「ナイトさるく」のトライアルに同行しました。


脱炭素先行地域の取り組み
2023年11月、長崎市は環境省の定める「脱炭素先行地域」に認定されました。
現在、国の支援を活用しながら、産官学連携して取り組みを進めています。
脱炭素先行地域とは
2050年カーボンニュートラルに向けて、積極的に脱炭素化を進める地域のこと。環境省は、2025年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を選定し、2030年度までに多様な地域において、脱炭素と地域課題を同時解決し、暮らしの質の向上を実現しながら脱炭素に向かう取組を推進しています。令和5年11月7日の第4回目の選定で、長崎市を含む12件が選定されました。
長崎市では、長崎市、長崎居留地歴史まちづくり協議会、株式会社ながさきサステナエナジー、(一社)長崎国際観光コンベンション協会、長崎総合科学大学、株式会社ゼンリン、NTTアーバンソリューションズ株式会社、長崎県(※令和6年6月に参画)の共同提案が採択されました。
長崎市の計画の特徴は「脱炭素化」と「観光振興」の両立です。長崎の観光コンテンツとして高い認知度のある「夜景」をサステナブルツーリズムのコンテンツに進化させる取り組みを行なっています。
「東山手・南山手エリア」の脱炭素化
東山手・南山手地区は、世界文化遺産を含む「国選定重要伝統的建造物群保存地区」です。外観変更などは難しいため、屋内を中心に照明のLED化・高効率な空調機器の導入を進めています。対象は住宅(553戸)や民間・公共施設(196施設)です。
また街路灯のLED化など、歴史的な特徴・景観の保全に配慮しながら脱炭素化を推進しています。


「稲佐山から見下ろす長崎夜景ランドマーク施設群」の脱炭素化
世界新三大夜景である「稲佐山から見下ろすライトアップ施設群」も脱炭素化を図ります。
同じく観光・ライトアップ施設84施設、街路灯等をLED照明に変更し、高効率空調を導入、再エネ電力を供給します。

長崎市版サステナブルツーリズムの発信
掲げているのは、「歴史文化」×「夜景観光」×「脱炭素」を融合させた「長崎市版サステナブルツーリズム」。「持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」の認証を取得、世界に発信し、選ばれる観光都市を目指します。
持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)とは
観光客と地域住民の双方が満足できる持続可能な観光を実現するための、適切な観光地マネジメントの推進を目的とした観光指標です。観光地や宿泊施設、旅行業者などに対して、環境負荷の軽減、地域文化の保護、経済的な持続可能性を考慮した取り組みを行うことを推奨しています。
夜の居留地エリア街を歩く「ナイトさるく」
長崎市版サステナブルツーリズムのモデルケースの一つとして、2025年2月、夜の居留地エリア街を歩く「ナイトさるく」トライアルを実施しました。
コンセプトは「夜の居留地エリアがランタンをもった訪問客で賑わい、 住民・訪問客で長崎の夜景を一緒に作り守り継いでいく」。
関係者らが実際に居留地を歩き、今回の企画と脱炭素との親和性やターゲットの検討などを行いました。

居留地エリア ナイトさるくのコンセプト
①脱炭素環境 … 電灯電源は再エネ由来
②地域課題解決 … 夜に第三者(訪問客)の目が行き届く街になり、まち全体が安全になる
③地域裨益 … 夜しか見られない景色をさるくとして新たな商品開発
④サステナブル … 観光客が稲佐山からの夜景の一部となり、自らが夜景を守る“当事者”となる


※ランタンフェスティバル期間中だったため、共同提案者である株式会社ゼンリンさんから中華ランタンを特別にご提供いただいた




東山手十二番館周辺からスタートし、山手洋風住宅群、大浦展望公園、大浦天主堂と居留地をぐるりとガイドしてもらいました。
各スポットでそれぞれの歴史・エピソードを語っていただきました。




最後はセトレグラバーズハウス長崎にて歓談・意見交換を行いました。

ー 関係者の皆さんにお話を伺いました。
NTTアーバンソリューションズ 長野さん
長野さん:
地域の課題解決のために、みんなで一緒にまちづくりをしましょうということで弊社も参画しています。
長崎市は、いろいろな歴史・見どころのある観光地ですが、昼間は人がいても、夜は人気(ひとけ)がなくなったりといった課題があります。
その課題解決のための施策の一つが、「脱炭素×サステナブルツーリズム」という今回の取り組みです。
ナイトさるくは、さるくガイドの皆さんが元々実施されていたのですが、そこに脱炭素を掛け合わせるというのが重要なんです。
この取り組みを通して、長崎市が脱炭素先行地域として頑張ってるんだということを発信できればいいなと思います。更に「勉強になったと」いってもらえるモデルを目指したいですね。
まずは居留地という一部の地域から始まる取り組みなのですが、将来的には長崎市民みんなで頑張る、という機運をつくっていきたいです。市民ひとりひとりが自負を持ち、市外から来た方に長崎市が脱炭素先行地域であることを説明する、そうやって広がっていけばいいなと考えています。

長崎国際観光コンベンション協会 坂井さん
坂井さん:
暮らし、営み、歴史文化など、「長崎らしさ」には様々な要素がありますが、「夜景」もその一つです。稲佐山から見下ろす夜景だけでなく、街中から見上げる夜景も長崎ならではの魅力です。
でも、「夜間景観を維持」していくためには、CO2の排出・どう省エネするかという課題が連鎖します。今回の取り組みがその課題解決につながればと期待しています。
今日のトライアルでは、ランタンを持ちながらまち歩きをしました。そうすることで、まち歩きをする自分たちも長崎の夜景の一部になれますね。これは新しい楽しみ方にもなってくるんじゃないのかなと思います。ツーリズムの面からも、そして長崎ならではの夜間景観を維持していくという面からも、これをきっかけに更に新しいコンテンツが生まれるといいなと思ってます。

長崎市ゼロカーボンシティ推進室 山口
山口:
さまざまな企業・団体の皆さんのご協力でトライアルが実現できました。とても寒い日で大変でしたが、今後に向けて良いトライアルになったと思います。
ナイトさるくというコンテンツには+αのいろいろな可能性があると思っていまして、例えば婚活などとは相性が良いと考え、トライアルには、長崎県の婚活サポートセンターの方にも参加いただきました。
今後もさまざまな可能性を探っていきたいと思います。

ここ居留地は、過去にグラバーさんたちの活躍により石炭産業で発展してきた町です。
そこが次は脱炭素の要素を取り入れていく、そんなストーリーでさらに地域として魅力を増していけると考えていますし、訪問客の増加によって新たな資金循環も生まれて、地域が活性化していけると思っています。
引き続き、持続可能なまち、選ばれ続けるまちの実現に向けて、脱炭素という面から貢献したいと思っています。
さるくガイド 桐野さん
桐野さん:
もともと「まち歩きは基本的にサステナブルだな」と感じていました。
またちょっとしたことですが、まち歩きの際、小さい袋を持ち歩き、ゴミが落ちてたら拾ったりはしてたんです。
今回、脱炭素先行地域の取り組みとしてナイトさるくを実施して、普段のさるくでもその要素を散りばめていきたいなと思いました。
省エネだったり、サステナブルということを、改めて意識してみようかなと思っています。

長崎市の脱炭素先行地域としての計画は、2028年までの5年間。引き続き「長崎市版サステナブルツーリズム」の実現に向けて取り組んでいきます。
